2013年4月19日金曜日

ブレてない四代目猿之助_四国こんぴら歌舞伎(1)

というわけで、琴平駅に今年も来てしまいました。

芝居の神様、金比羅さま、お迎えくださりどうもありがとう。
今年は、カコトラ勧進ツアー・女子部ということで、正規軍より一足先に観劇するのです。このツアーは、JTBのパック(16日の昼の部&弁当とホテルと夕食がついている)を利用しつつ、夜の部は自力でチケットゲットということで、15日の夜の部から始まりです。


二十九回 四国こんぴら歌舞伎大芝居
市川亀治郎改め 四代目市川猿之助襲名披露


一、銘作左小刀 京人形(きょうにんぎょう)

  左甚五郎      市川右 近
  女房おとく     市川笑三郎
  奴照平       市川月乃助
  栗山大蔵      市川弘太郎
  娘おみつ実は井筒姫 市川春 猿
  京人形の精     市川笑 也

二、四代目市川猿之助襲名披露 口上(こうじょう)

  亀治郎改め市川猿之助
   幹部俳優出演

三、三代猿之助四十八撰の内 奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)袖萩祭文

  袖萩/安倍貞任  亀治郎改め市川猿之助
  八幡太郎義家   市川門之助
  平傔杖直方    市川猿 弥
  妻 浜夕     坂東竹三郎
  安倍宗任     片岡愛之助



各演目のあらすじは、こちら

今回の枡は、「への7」番。花外ですが…

花道が目の前です。目の、まえです。

(以下、ネタばれ注意です。)
「京人形」は、以前、別の役者さんのを見た事がありましたが、そんなにピンと来る演目ではなかったのですが、右近&笑也の取り合わせは面白く見られました。

特に、笑也丈の京人形の精の人形振りが、(甚五郎が吉原で拾った)鏡を懐に入れられたり抜かれたりすると、ぶっきらぼうになったり可憐で柔らかな動きになったりして笑いを誘っていました。そもそも、笑也丈はいるだけでお人形みたいにみえる清楚な美形なので、この役はピッタリはまっております。その上、その骨格どおなっているの?と思うような、なんだか不可思議な動作、それから、「まばたきしてない!」ってことに、終始仰天でした。小さな小屋ですから、観客に人の気配を感じさせないこの演技はすごいですね。

後半は、右腕を切られた甚五郎(右近)が、彫物師の名人ってことで(←なんせ、伝説の!左甚五郎なので。)トンカチやカンナなどの大工道具をつかっての立ち回り。…へんてこな嗜好ですけど、歌舞伎だからありです。立ち回りの若い役者さんが逆立ちする場面で、ちょっともたついたら、会場中の息がそこに集中して、無事に成功したら満場拍手喝采でした。右近丈が苦笑いしていて可笑しかった。
でも、筋だけ追うと、左甚五郎ってフィギュア・フェチみたいなキャラですね。で、この人形は「生き人形」に見えるけれど、どうも木彫家らしいんですよ。ま、どうでもいいか。

例の福山幕が現れて「襲名口上」。
この幕、金丸座にも合いますね。歌舞伎座とはサイズが違うから、巡業に合わせて何枚か作ってあるんでしょうか。
音頭は、片岡秀太郎丈。風格があって暖かみのあるいい口上でした。となりの愛之助を一個とばしで、「年の順」ということで寿猿丈を指名したら、なにやら役者さん達の肩が震えている…なにか楽屋落ちのネタがあったのかもしれません。で。寿猿丈の口上が素晴らしい。「自分は子役の時以来の金比羅歌舞伎で、70年ぶりです」と!!どよよ〜。中村屋の小山三さんみたいな方が、ここにもいらっしゃいました。竹三郎丈(←も同年代!)、澤瀉屋一門、そして愛之助丈、全体に和やかで、爽やかで、テンポのある、いい口上でした。
猿之助は、新橋の襲名の時と同じ、歌舞伎はお客さんと役者が一緒につくるもの、という口上。これが、四代目のコアにある信条なのでしょう。そして、今回の舞台はそれを十二分に表現してくれたものだったと思います。

「袖萩祭文」は、本当に素晴らしかったよ。
あの席ですから、目の前を、猿之助が演じる盲目の袖萩が娘のお君ちゃんと肩を寄せ合いながら歩いて行くのを、間近に逆光で見てしまった…。美しっ。袖萩が通り過ぎたら、なんだかずっといい匂いがしてました。
見せ場では、葡萄棚から白い雪が舞台だけじゃなく客席全体に舞い落ちて、その中で、袖萩が三味線を弾きながら祭文語りをします。(阿古屋の三曲じゃないけれど、難役でしょうね。)
完璧なまでにドラマチックないい場面!小屋全体がひとつになりました。
…が、ここで誰かの携帯が。しかも知らんぷりしているのか鳴らしッ放し!しかもバイブ付きで!おいおいおいおいおいおい…。誰に突っ込めばいいのじゃ!

携帯は、始まる前に切りましょう。お願いだから。

で、吹雪で凍えながら癪で苦しむ母・袖萩をいたわる娘のお君がまた健気でかわいいのですが、この日の子役ちゃんは女の子ですごく上手い!感心していたら、なんと地元の子だと!恐るべし琴平町。

後半は、猿之助二役の安倍貞任(袖萩のだんなです)と愛之助の弟・安倍宗任の勇壮な荒事が様式的な見せ場を作ります。色彩が綺麗。早変わりもあって、しっとり哀しい前半とのコントラストがすごい。前半部分しか見た事がなかったので、こんな面白い演目なんだと認識を新にしました。
それにしても、つくづく袖萩はかわいそうです。


十分に満足して、小屋を出ると、まだ全然明るいじゃん!
確か去年は奈落ツアーもあったけど、真夜中だった。
今年は通り札も売ってないし、いろいろ変わってしまったのかな…。

つことで、明日は「四の切」です。ほっほー。

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