2017年11月14日火曜日

10月に読んだ本

10月の読書メーター
読んだ本の数:3
読んだページ数:624
ナイス数:5

浅草演芸ホールの看板猫ジロリの落語入門浅草演芸ホールの看板猫ジロリの落語入門感想
たしかこの猫の噂はね、去年の長唄の会のゲストでいらしてくださった柳家小菊師匠から聞いたんですよ。浅草演芸ホールが鼠対策に猫を飼った話。それでどんな猫なんだろうと気になっていたら、なんと写真集が出るほどの看板猫になっていたんですね。「ジロリ」って名前がついていたのかー。昔、実家でかっていた猫(名前は「ゴマ」)にも似ていて親近感。落語家さんは猫好きが多いのかな?っていうか、猫好きの人たちを寄席に誘い込もうっていう意図の入門書でした。でも「ジロリ」に会いに浅草演芸ホールに行ってみようかな?と言う気になりました。
読了日:10月31日 著者:

ちゃぶ台返しの歌舞伎入門 (新潮選書)ちゃぶ台返しの歌舞伎入門 (新潮選書)感想
著者の飄々とした文体とゴレンジャーにまで触手を伸ばすサービス精神に油断して読み進んでしまいますが、これ決して入門書ではナイと思います。400年という時間をかけて洗練もされ、またご時世や変化する大衆の感性に影響されつつ歪みながら、時々の俳優の身体を媒体として発展してきた歌舞伎。すこし興味をもって通い出すと、同じ芝居を別の俳優が演じる面白さ、世界や趣向などの奥深さを知り、決まり事なんかも気になってくる…そんな感じになった時、この本は立体定規を使うように解説くれて、痒いところを心地よく掻いてくれます。きっと。
読了日:10月30日 著者:矢内 賢二

新版・落語手帖新版・落語手帖感想
銀座シックスにある蔦屋書店の古典芸能コーナーで見つけて即買い。最近、カーステレオ代わりにiPhoneを繋いで落語を聞くことも多いので、こういう本を探していました。1988年に駸々堂から刊行されたものが、文庫化され、更に加筆・改訂されて新書版に。ロングセラー本ですね。1噺を1ページで、「梗概」「成立」「鑑賞」「芸談」「能書」でまとめられています。何かに似てるな…と思ったら、渡辺保先生の「新版・歌舞伎手帖」だ、同じ講談社だ、と気づいてしまった。構成そっくり。でも、どちらも便利です。
読了日:10月29日 著者:矢野 誠一

読書メーター

2017年11月13日月曜日

国立劇場10月歌舞伎『通し狂言 霊験亀山鉾』

今年は仁左衛門丈の「悪の華」が乱れ咲きなのでございます。

夏の大阪松竹座に仁左衛門丈の『盟三五大切』を拝見しに参上したことは、以前に書きましたが、10月には国立劇場にてこれまた悪役が主人公の南北もので『通し狂言 霊験亀山鉾』が上演されました。(あう、1ト月もライムラグ…忝ない)

…というので、家元の会終了後、休日を虫六子のアパートにしつこく滞在して、初日の舞台をみて帰る作戦にでた虫六でございました。まあ、がんばった自分へのご褒美に、仁左衛門の極上注入ってことで…ちょっと過分なご褒美かも知れないけれども。


四世鶴屋南北=作 奈河彰輔=監修 国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言 霊験亀山鉾れいげんかめやまほこ)― 亀山の仇討 ― 四幕九場

序  幕 第一場 甲州石和宿棒鼻の場
      第二場 同 石和河原仇討の場
      第三場 播州明石網町機屋の場
二幕目 第一場 駿州弥勒町丹波屋の場
      第二場 同 安倍川返り討の場
      第三場 同 中島村入口の場
      第四場 同    焼場の場
三幕目       播州明石機屋の場
大 詰        勢州亀山祭敵討の場



(出演)
藤田水右衛門  
古手屋八郎兵衛    片岡 仁左衛門
 実ハ隠亡の八郎兵衛
大岸頼母      中村 歌  六
石井兵介・下部袖助  中村 又 五 郎
石井源之丞     中村 錦 之 助
源之丞女房お松    片岡 孝 太 郎
若党轟金六     中村 歌  昇
大岸主税      中村 橋 之 助
石井家乳母おなみ   中村 梅  花
藤田卜庵・縮商人才兵衛  片岡 松 之 助
丹波屋おりき    上村 吉  弥
掛塚官兵衛・仏作介  坂東 彌 十 郎
芸者おつま     中村 雀右衛門
石井後室貞林尼   片岡 秀 太 郎
                    ほか

「亀山の仇討」の世界に、通称「鰻谷」と呼ばれる「お妻八郎兵衛」の世界が綯い交ぜにになっている構造だそうで、この度、仁左衛門が演じるのは、敵役の藤田水右衛門と、その水右衛門に瓜二つの隠亡・八郎兵衛の二役。

ニヒルな黒光彩を放つ藤田水右衛門は、初っぱなから返討ちにつぐ返討ちで、それも徹底的にキッタナイ手を使って無残に殺ってしまう、文字通り冷酷非道な冷血漢。何かに水右衛門を色悪と紹介しているのを読んでから観にいったのでしたが、こりゃ実悪って役じゃないのぉ−、360度悪い奴だよ〜と思っていたら、あとで、長谷部浩さんが劇評で「仁左衛門が演じると実悪の水右衛門に色悪の魅力が加わる。」と書いているのを読んで、(その通り!)と膝を打ちました。なんだかんだで、一番麗しいのは役者としての仁左衛門なのですね、で納得。

「錦絵のような」と仁左衛門が会見で話してましたが、本水の殺しの場、だんまりの勢揃い、確かに絵面にこだわった上等美しい舞台でした。

見せ場を上げれば指が足りませんが、焼場の場、八郎兵衛の草井戸の中に仰向けバッタリからの、棺桶破りの早替わり。涼しいどころか冷たいオーラを纏っての水右衛門の登場の場面。役者の年齢のことなど言うは野暮でしょうけど、超人としか表現できない、仁左衛門の身体性。

隠亡(=おんぼう)とは死者の火葬や埋葬をした墓守のことで、江戸時代は賤民身分の扱いでした。そんなわけで、八郎兵衛は何か悪事をやらかしてそんな身分に身を落とした人物のようなのね。罪人の印の腕の彫り物隠していたしね。どちらかと言えば、八郎兵衛の方が「色悪」に当たる役どころでしょうか。ちょっと鬢に唾をつけて髪を整え、揚屋に上がる場面などは色っぽいのに、おつまに愛想尽かしを食らった後の「覚えていろよ」の声色はドスが効いてて震え上がりました。
演出では、この場面のすぐ後で、おつまが手紙をしたためるところの背景に流れる
 〽︎憂き事に、夜半も鳴くなる時鳥…
の独吟が全く綺麗な旋律でウットリでした。
今回の登場人物では、吉弥さんのおりきがとても良かった。

でも、全体には脇の役者さんにはまだかっちりセリフが入っていない方などもいて、ちょっと間が狂ってしまったり…。せっかくの仁左衛門の完璧な熱演に水を差されたところなどもあって、(おいおい)でしたが、初日ってこういうものなのかな?

東京住まいなら、何度か足を運んで舞台の変化を楽しんだりもできるのでしょうが、鄙の都の住民である虫六には出来ない技なんですが…、なぜかこのお芝居は2回みるチャンスがありました。チケット売り出しの日に参戦できない可能性があったので、この芝居だけはどうしても観たいと思っていたので、保険にイープラスの先行予約を押さえていたのです。そして、この日も休みをとれたので来ちゃいましたよ。


イープラス、いろいろ特典がありまして、お弁当やら(普段は借りない)イヤホンガイドやら。(筋書きは前回買ったやつです)サービスいいのね。
(でも、後ろの方に劇場側で発売した席とダブルブッキングがあったようで、仔細は分からないけどトラブルになってました。↓選りに選ってこんな日に劇場は焦ったでしょうね。)

というのは、なんとこの日は堀向こうにお住まいの両陛下がお出ましになる展覧芝居の日だったのでした。もちろん偶然です。

第二幕「焼き場の場」をご覧になり一旦ご退場されたので、(えー、これだけ観てお帰りに?それはないでしょー!)と思ったら、さすがにもう一度お出ましになり、大詰めまでご覧になりました。会場の皆さんの拍手に手を振って応えられて、なんだか一体感。

随行の方も相当たくさんいて、大詰めの最初に上手舞台側から報道の三脚やらカメラが何台か立ったけど、ものの1〜2分で消えました。きっと細かく決められているんだろうな。
それにしてもやんごとなきお立場とはいえご窮屈でしょうね。ご退位されたあかつきには、好きな芝居ならたっぷり通しでご覧いただけますように。

そのせいとは言いませんが、この日の役者さんたちは初日にくらべて緊張感がありました。仁左衛門さんは相変わらず完璧でしたが。

両陛下に、胎児殺しをみせる仁左衛門。
両陛下に、本水の中の立ちまわりをみせる仁左衛門。
両陛下に、殺した人の数を指折ってみせる仁左衛門。
両陛下に、井戸に逆さま落ちからの早替わりで棺桶破って登場をみせる仁左衛門。
…役者だからこその冥利ですよね。

そして、最後は幕があがったままの柝で、からっと一座膝を折っての「本日はこれぎりー」という締め方、大好きです。夢から覚めるようで。

終演後に会場を出たら、黒塗りが何台も待っていて、ものものしいことになってました。
が、お客さんも陛下の出待ちでなかなか帰ろうとしないのね。
このころ、舞台を終えた仁左衛門さんは化粧を落とさず陛下と歓談されていたらしいです。今月の通し狂言をやりきって、何日もおかず歌舞伎座で早野勘平をやるというお話をして仰天されたとか…。やっぱり超人ですかね。

2017年10月23日月曜日

10月歌舞伎座『極付印度伝マハーバーラタ戦記』

家元の会にN姐さんが聞きにきてくださり、歌舞伎座にかかる『極付印度伝マハーバーラタ戦記』のチケットがまだ3階席に空きがある…という話になり、虫六的には今月は悪の華(国立劇場『霊験亀山鉾』)と『ワンピース』があるので優先順位低めでしたが、3階なら見に行ってみようと盛り上がり、2日目の舞台を観にいきました。

3階A席のチケットは歌舞伎会のゴールド会員さまに先買いされるので、虫六が旅費を掛けても観たいと思うような演目はなかなかゲットできず、あまりこの席で観るチャンスはありません。また「旅費掛けるくらいなら花道脇で見たい」と思ってしまうのが人情でございましょ。
新歌舞伎座の3階席、けっこう見通しが良いです。1階の高い席で前の人の頭が邪魔になるところよりも、ストレスがないかも…。


新作歌舞伎『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』

序幕 神々の場所より 大詰 戦場まで

迦楼奈(かるな)/シヴァ神    菊之助 
汲手姫(くんてぃひめ)      時蔵 
帝釈天(たいしゃくてん)     鴈治郎 
鶴妖朶王女(づるようだおうじょ) 七之助 
百合守良王子(ゆりしゅらおうじ)/多聞天(たもんてん) 彦三郎 
風韋摩王子(びーまおうじ)    坂東亀蔵 
阿龍樹雷王子(あるじゅらおうじ)/梵天(ぼんてん)  松也 
汲手姫(くんてぃひめ)/森鬼飛(しきんび)      梅枝 
納倉王子(なくらおうじ)/我斗風鬼写(がとうきちゃ) 萬太郎 
沙羽出葉王子(さはでばおうじ)  種之助 
弗機美姫(どるはたびひめ)    児太郎 
森鬼獏(しきんば)       菊市郎 
拉南(らーな)         橘太郎 
道不奢早無王子(どうふしゃさなおうじ) 片岡亀蔵
修験者破流可判(はるかばん)  権十郎 
亜照楽多(あでぃらた)     秀調 
羅陀(らーだー)        萬次郎 
弗機王(どるはたおう)/行者   團蔵 
大黒天(だいこくてん)     楽善
太陽神(たいようしん)     左團次 
那羅延天(ならえんてん)/仙人久理修那(くりしゅな) 菊五郎 

パンフレット買いましたけど、役名が難しくて漢字もふりがなも頭に入りませんです。
(||li`ω゚∞)
…が、観たらとても完成度高いし、分かりやすいし、面白かった。なにしろ急に行ったものだから予備知識なかったので、いい意味で激しく予想を裏切られました。

世界三大叙事詩と言われる有名な複雑な世界をよくぞ!と分かりやすい脚本(脚本は青木豪、演出は宮城 聰)。歌舞伎ではお馴染みのお家騒動がベースで、古代神話の突飛な展開あり、妖怪変化、立ち回り、道行…あり、歌舞伎の寸法に収まってて嬉しくなりました。床には竹本の前にインド打楽器囃子。木琴の音が面白かったけど、これはインド楽器なのかな?シタールかと思って双眼鏡で覗いたら浄瑠璃の三味線方が演奏してて仰天しました!

後で知ったのですが、あのインド囃子はインドの楽器というよりも、アフリカや南米の楽器を使っていたそうです。(歌舞伎美人『マハーバーラタ戦記』特設ページ音楽はどうなる?)←こういうお話は筋書きに載っけて欲しいよね。

打楽器囃子の生演奏やシタール風三味線にも仰天したけど、浄瑠璃も面白いこと語ってました。当たり前だですが、長唄も黒御簾も新曲なんですよね。新作流行の昨今、地方さんや囃子方も相当がんばってる!踊りもインド舞踊チックな不思議な振付けが楽しい。丁寧に時間をかけて造りあげている印象で、好感をもちました。


冒頭に登場するインドの神様方の衣装がキンキラキンで少々鼻白みましたが、下界に場面が移ったら、皆さま着物姿(綯い交ぜ…笑)、額に赤ポチついてるのがインドの印。
神々が愉快がって演じている感じ、先だってのたぬき会の悪ふざけモードは、このノリだったのか?!となんだか納得しました。

さて、音羽屋・萬屋に交じって際立った存在感を示したのは七之助でした。
七之助の鶴妖朶(ツルヨウダ)は、気品と仇な迫力が矛盾なく混在していて、打ち掛けの中に着た黒無地がカッコイイことこの上なしです。立ち回りも上手いし、それでいて適役なのに感情移入したくなる可愛いさもある。
もう、このスケールの役をこなせる女形は七之助だけですね。8月の夜長姫で「七之助化けた!」と口走ってしまいましたが、やっぱり良くなってるね。

松也の阿龍樹雷(アルジュラ)王子も良かったです。伸び盛りの役者を観るのは爽快です。



2017年10月17日火曜日

9月に読んだ本

9月の読書メーター
読んだ本の数:4
読んだページ数:698
ナイス数:19

イケズの構造 (新潮文庫)イケズの構造 (新潮文庫)感想
面白いなぁ、京都人の言語感覚。京言葉の3段論法(?)注意→イケズ→いらんこと、の塩梅が分かるようになるとそうとう面白そうだと思うけど、所詮、我も「よそさん」なんで、京都に入ればただの生け贄か?でも、日常的に歯が浮く会話より、毒交じりの会話が出来る人の方が楽しいよね。京都の人に限らずですが。それはそれとし、ひさうちみちお先生がお元気そうで、嬉しい限り。
読了日:09月26日 著者:入江 敦彦

夜長姫と耳男夜長姫と耳男感想
野田版歌舞伎「桜の森の満開の下」の影響で、原作関連の読書をしていましたが、この作品を一等先に読むべきでした。先日、残夏の小学校の校庭に大きな蜘蛛の巣が張っていて、思わずプチプチと糸を切って慌てる蜘蛛の様子を観察してしまい(夜長姫みたいだな)と思いました。高楼の上から、人々が大量に苦しみ死んでいく様子を眺め「キリキリ舞いをしているわ」と輝きの表情を浮かべ喜ぶ姫の本性は…で、「桜の森_」の鬼女房と合体というのがお芝居の構成だったけれど、原作の夜長姫はずっと怖い。神(?)…ということは、耳男は神殺しなのか…?
読了日:09月15日 著者:坂口安吾

夜長姫と耳男 (ビッグコミックススペシャル)夜長姫と耳男 (ビッグコミックススペシャル)感想
坂口安吾シリーズの第一作目。恐ろしきは姫の笑顔…。
読了日:09月10日 著者:近藤 ようこ


桜の森の満開の下 (ビッグコミックススペシャル)桜の森の満開の下 (ビッグコミックススペシャル)感想
けっこう原作のままでした。原作の深い闇に足を取られるような、何とも言えない恐ろしさ、怖いと分かっているのに操られていく自身の虚無感とか、説明しがたいもろもろがやや平板になってしまったようで残念。
読了日:09月03日 著者:近藤 ようこ

読書メーター

2017年10月15日日曜日

松永忠五郎喜寿記念・松永忠三郎襲名記念演奏会_2017年9月30日

泣いても笑って本番はやってくるってことで、翌日(9月30日)はいよいよ松永忠五郎喜寿記念・松永忠三郎襲名記念演奏会でありました。

国立劇場小劇場での演奏会は、家元の古稀記念鉄九郎師匠師籍30周年記念、につづいて3回目となります。家元、直矢さん、誠におめでとうございます。

我一門『太鼓の曲』の出演時間は、早め5番目の11時40分。緊張している余裕すらありません。
いろいろご挨拶などして、楽屋入り。朝、着物を着付けるのに予定外に時間がかかってしまい、本当はホテルで昨日不安だったところをお浚いしていきたかったけど、それができなかったので、楽屋でちょっと確認と思っていたら、舞台近くの楽屋なのであんまり音を出しちゃいけないよと注意されて、調弦もままならないまま、あれよあれよという間に順番がやってきて、追い立てられるように回り舞台の裏面にスタンバイ。

三味線はどなたかがまとめて調弦して持って来てくださったのですが、ふとみると糸が棹からずれている… ( Д) ゚ ゚
後見さんに「あのう、これ押さえられないので駒をズラしていいですか?」と声を掛けると、
「え、ズラしたら音変わりますよ。」(←知っとるわ、だから聞いてるんですわ!)…と言いつつ、時間を気にしながら奥の方に三味線を持って行って直してくださいました。
(ひぃー、セーフ)
いろいろ心許なくなっていたら、先ほどの後見の方が、「大丈夫ですから、いつも通りに落ち着いて。ちゃんと出来ますから。」と声を掛けてくださり、少し緊張の波が引いてゆきました。
(ありがたや…というか、暗示にかかりやすいオレ…。)

しかし!
…お隣では、我が師匠が「あら、これ調子合ってないわねぇ…」とか言いつつ、びょんびょん鳴らしながら糸巻き回しそうになり、「(小声で)先生!変えたらだめです!先生が変えるとみんな変えなければならなくなります!表に響くので、音も出したらだめだそうです!」って、なんでオレが先生にストップ掛けてんの?こんなんで大丈夫なの???

と、ドタバタやっているうちに、舞台が回って本番。
いつものことながら“舞台に立つと三層倍増しの先生のオーラ”に炙られながら演奏開始。

弾き始めてみると、うーん何となくいつもと調子が違ってる…、とにかく先生の調子に合わせて弾いていこうと耳を澄ますと、んんっ?全体のテンポがなにやら不穏で違和感が…、でも舞台が広くて、どこで何が起きているのか分からない…、どうしたらいいの???(心臓はバクバク・バクバク)隣の先生に合わせてとにかく手を動かしていくうちに、太鼓のテレツクが入ったので、呼吸を整え落ち着きました。
そこから先はテンポも回復して、実は個人的には怪しいところはあったけれど、夢中で演奏。なんとか岸についたと思っていたら(!)なんと、最後の最後、ドッテン、ドッテン、ドテ、ドテ…の決まるところで先生の糸がバチンと切れた!(って、いうか演奏が終わって気がついたら切れた糸が目に入りました)。最後の最後で良かった〜、先生の独奏部じゃなくて良かった〜。
(最初の乱れの原因は、あとで分かりました。)

舞台ってドラマチックじゃ。

それにしても『太鼓の曲』は、虫六が入門したばっかりのころに、10年選手の姉弟子の皆さんがお稽古していた曲で、なんて難しいのを弾いているんだ!と仰天した曲でした。その曲を、入門10年の自分が国立の舞台で演奏させていただけるとは、続けてみるもんですね…。(遠い目)

早めの順番で、朝から国立までお運びくださった皆さまに感謝。遠くからきてくださったり、差し入れいただいたり、本当にありがとうございました。


いやはや、舞台には魔物が棲んでいるといいますが、こんな舞台裏の言い訳めいた話も素人だから勘弁していただき、吐露してしまいましたが、プロの舞台人はどんな状況でも表舞台に言い訳はなさらないわけで、本当に凄いと思います。
先日の4代目猿之助さんが新橋演舞場『ワンピース』のカーテンコールの際にすっぽんの機械に巻き込まれて大けがをなさった時も、観客の方々は気がつかないまま会場を出られたとか。ご本人ばかりでなく、舞台裏も共演のみなさんもパニック状態でないわけないのに、それを表にださない徹底ぶり、凄すぎです。

(それにしても猿之助さんの全癒を心より祈念します。焦らず、元通りの身体を取り戻してください。待てます、待ってます!)

さて、後半は、プレッシャーから解放されて松永会の皆さまの演奏を堪能。

大曲をお一人で掛ける方やけっこう若いのに上手な方とか、感心するやら、緊張感も伝わってくるやらで、いろいろ勉強になりました。そして、どんな状況でも、きちんとフォローして1曲の演奏としての完成度を支える、家元はもとより助演の黒紋付きの師匠方…プロい。
しかもね、夕べの下浚いは深夜に及んだとか…、体力も半端ないですよね。

人前で演奏することを目標に、お稽古は組み立てられるわけですが、この10年、お三味線を触るようになり、大小のお浚い会で演奏の経験もさせていただきました。そのような本番の経験が、個人的に自分にどんな成長をもたらしたのかなと考えて、思うことは、音楽的な感性が研ぎ澄まされたとか、技術的な上達というよりも、極度の緊張状態のなかで何かトラブル(自己要因も他要因も含めて)が起きたときに、失敗を即時に受け入れて、そこから演奏のなかで「立て直す」力ではないかとしみじみ思います。もちろん、その力量(精神力・技量)は日頃のお稽古で身についていくものでしかないわけですが。

厳しい修行の末に演奏家になりそれを生業にしている舞台人の皆さんとは、違うレベルで、日々別の仕事で飯を食い、そのなかで決して安くない経費を投じて立つ、素人三味線弾きの舞台というものがあったりします。自己満足といってしまえばそれまでですが、この日演奏くださった皆々さまのドキドキに共振しつつ、そんなことを思うのでした。そして、やっぱりもっと上手になりたいなと、改めて思いました。


さて、家元の会にはいつも「たぬき会」という歌舞伎俳優の皆さまによる演目がございます。家元から我々に対するご褒美と受け止めておりますが、これがとんだご馳走でありまして、今回は
 演目は『供奴』
 唄方:菊五郎、松禄、菊之助、團蔵、左団次
 三味線:仁左衛門、萬次郎、竹松、忠三郎(秀調さんの代演)、松太郎
 囃子:笛/福原徹、小鼓/亀蔵、彦三郎、楽善、大鼓/壱太郎、太鼓/権十郎

という面々が、お稽古中の歌舞伎座や国立大劇場から駆けつけてくださいました。家元の竹馬の友の左団次さんはのっけからいたずらモードだし、唄方・お囃子のみなさんのリラックスした様子と対照的に、まじめに演奏なさる仁左衛門さん率いる三味線チーム。(仁左衛門さんの真剣な表情に萌え(*゚ー゚*)てしまったご婦人数知れず…)明日・明後日から新作や通し狂言を抱えているという最中に、余技の舞台に立ってしまうポテンシャル。ただ感心するのみ。立て三味線の演奏をしっかり支えていたのは大鼓の壱太郎さんでした。

壱太郎さんは、名古屋での公演の間を縫って新幹線で往復しての韋駄天ご出演で、たぬき会の演奏とは別に、ご自身で『船弁慶』を1本掛けていらして、これまた仰天でございました。
…ほんと凄いんだよ、壱太郎さんは。玉三郎さんの『阿古屋』継げるとしたら、彼しか思い当たらんね。

2017年10月9日月曜日

松永忠五郎喜寿記念・松永忠三郎襲名記念演奏会_下浚い会

ブログでは沈黙していましたが…、
9月30日(土)は、松永会の家元・松永忠五郎師匠の喜寿記念と、そのご子息直矢さんが4代目松永忠三郎を襲名する記念の演奏会が、国立劇場小劇場で開催されました。

本番の前日(29日)、その下浚い会(リハーサルみたいなやつ)が、四谷近くの某所であるというので、忠美恵一門は、前乗りで国立劇場の隣のホテルに滞在しておりました。

眼下に眺める皇居のお堀。雲が映っていて綺麗です。
お天気が良くて良かった。

順番では1時〜3時ごろということで、少し早めに会場に入ったのですが、すでにはじまっておりまして、場内緊張感に包まれております。

東京では折々に演奏会もあるということですが、我らはこんな大きな演奏会は滅多にない経験なので、下浚い会も当事者と言うよりも珍しいものをみる心持ち。本番の日には黒紋付きで舞台にあがったり裏方を務められる名取の師匠さんたちが、それぞれお好みの着物をお召しになり妍を競っておられます。
演奏そっちのけで目の保養(笑)
下浚いの時は、紬もありなんですねー。

本当は、我らも下浚いも着物…ということだったので、季節柄、単衣か袷か、2枚(下浚いと本番)か、長襦袢は…と、錯綜することがあったのですが、先生のまさかのご英断により家元直談判で下浚いは洋服で!ということになり、荷物が半分になりました( ̄ω ̄;)
まぁ、そんな心配より演奏に集中しろってことでしょうか…汗

キビキビ立ち回っている黒服集団がいるな(!)と思ったら、お三味線屋の三雅のスタッフさんでした。カッコいいー。

粛々と順番に演奏していきますが、基本的に合わせるのは1回切り。やり直しとかやらせてもらえません。一門の中ではそれぞれお稽古はして来ている分けなんですが、本番ではプロの方々に助演をしていただきます。はじめて顔をあわせるような場合もあるわけで、長唄は長いので曲の一部を抜いたり、テンポや調子なども、このたった1回こっきりの下浚いで確認して合わせ、本番に掛けるのです。恐ろしや〜、玄人集団。

我ら忠美恵会は『太鼓の曲』(杵屋正邦作曲 1946年)という器楽曲を選曲したので、唄の要素はありませんが、三味線に鉄九郎師匠と忠三郎師匠が入ってくださることになっており、囃子方に1人太鼓をお願いしております。太鼓ははじめてお会いした梅屋巴師匠。(よろしくお願いします。)
ご挨拶もそこそこに、いきなり演奏。お囃子にあわせた演奏をするのもはじめてな上に、目の前にお家元がいて緊張して、手を間違えたりもしましたが、全体的には気持ち良く…。太鼓が入ると演奏しやすい(!)という感触をもって、下浚い終了。
あっという間でしたー。
3時には終わると思っていたのですが、もう5時頃になってました。押してますー。

いつもお世話になっている圭江先生のご一門のお浚いを拝見して、さあ片付けて帰ろうと、正座していた膝を立てたら、ここで悲劇が…。

がーん、ワンピースの裾を踏んづけてボタンのところから鉤裂きが…∑(゚∇゚|||)
このショックを明日に引きずりませんように…(T_T)

会場を出たら、すっかり暗くなっていて、ホテルに戻ったら6時を回っていました。
明日は落ち着いていこう!

タクシー待ちしてた四谷駅近くで国立劇場のポスター発見!
明日は、この方のお三味線も聴けます(=´Д`=) でへへ。