2011年5月19日木曜日

東北大学大学院理学研究科出前講座 ―3・11地震と放射性物質の拡散について―

東北大学が、「出前講座 ―3・11地震と放射性物質の拡散について―」というのを一般向けに開催するというので、早めに仕事を抜けて聞きにいきました。

先着100名・予約なしというので早めに受付したら整理券を配っていて、とりあえず貰えたので安心して近所の喫茶店で時間を潰して開場時間に行ったら、もう会場中人でいっぱいでした。(失敗した〜!)ぎゅうぎゅう詰めでなんとか座れましたが、定員100名のところ150名入れて、あぶれた人向けに急遽第2会場をセッティングしたようです。やっぱり関心高いですね。



日時:5月19日(木)18:15〜20:40
場所:フォレスト仙台 第5・6会議室

仙台で正しく恐れるための基礎知識を地震の観測・研究を続けてきた科学者と放射性物質の拡散過程解明にかかわる科学者がわかりやすくお話しします。

(1)2011年東北地方太平洋沖地震について:松澤 暢(地震・噴火予知研究観測センター:地震)
(2)仙台に降った放射能とそのリスク:田村 裕和(物理専攻:放射線)
(3)大気による放射性物質拡散:岩崎 俊樹(地球物理専攻:気象)
(4)放射性物質をふくんだ水(汚染水)の海洋における拡散:花輪 公雄(地球物理専攻:海洋)

主催:理学部研究科/共催:東北大学サイエンスカフェ

地震、市内の放射能、放射能汚染の大気と海洋への拡散…と、バランスのいい内容でした。科学者に説明されると、分かったような気になるのは危険ですね。
福島県には、N大学の先生が「大丈夫」行脚をしているとの話なので、気にするなと言われるとかえって構えてしまいますが、東北大の先生が調べたデータではS市に関しては現状では放射性物質の影響は気にする程では無いみたいです。
でも、これは外部被曝の話…、内部被曝の原因となる食物などにどんな影響が出ているかという話ではなかったので、今後、農学部の研究者からでもちゃんとした話を聞きたいところです。

地震もこの先M8規模の余震があっても全然可笑しくない状況のようで、それもそうだけど、地震学の学者たちがどうしてこの度の地震を予想し得なかったのか…、これまでのパラダイムががらがらと崩れたという松澤先生の発言からして、きっとこの世界の学者等にとってはとんでもなく重い課題なのでしょう。プレートの移動でこれまで年に2センチづつ痩せていた東北地方は、この地震で4メートル太ったそうです。

田村先生の放射能講座は分かりやすくて、話も上手でした。原子核物理の専門だけど、原子力の専門ということではないそうです。何が原因で何回放射線量のサージがあがって、いまはこんな…というグラフ。ネットで見てましたが、説明されるとよく分かる。このデータも、震災でめちゃくちゃになり立ち入り禁止になった研究室にこっそり入って持ち出した計測器で個人的に計りだしたもの。(東北大の理工学部は計器類めちゃくちゃで大変だったんだな、そういえば…。)3月の中旬に水素爆発やベントで放出された放射性物質のうち、ヨウ素は半減期が8日なのでいまはほとんど影響がない状態だけど、セシウムは半減期が長いので大気や上空から雨や雪などで地面に沈着したものが今も放射線を出していて、事故の前よりも大気中の線量を少し上げているけど、世界の平均的な線量が0.1マイクロシーベルトのところ、S市は0.08マイクロシーベルトなので、(余談は許さないけれど)原発で臨界が止まっている今はとりあえず神経質にならなくてもいい…とのことでした。でも、アスファルトよりは土の上の方が放射性物質は残りやすいし、雨水がたまりやすい場所は高くなりがちなので要注意だそうです。
ガンの発症率に関しても、年100ミリシーベルトの閾値以下の数値についてはグレーゾーンなので、20ミリでも10ミリでも確率的影響としか言えなくて、ガンになったからといって「それは放射能の影響でガンになりました」とは断定出来るものではないとのこと。

気象の岩崎先生は、放射性物質大量放出のタイミングとその日(15日)の気象環境をアニメーション再現しながら福島にホットスポットができた経緯なども説明。大気の状態に寄っては、仙台もそのほかの地域もダメージを受けた可能性はある…と。16日だったらほとんど海に流れたのにとも言ってましたが、それだと水素爆発がもう一回起きかねなかったんだよね。いずれ、毎日風の向きを確認したり、どこに前線があるか確かめつつ、福島原発の成り行きに注視するということなんでしょうね…原発の周辺に住まう住民の恐がり方としては。

海洋学の花輪先生は、原発の汚水が海に大量放出されたことで、日本国は世界に対して加害者になったという認識を強調してました。海洋の汚染に関しては、本当に調査が遅れているらしく、水質調査のポイントをもっと密に広範囲に取ってデータを公表するようにと、学会は国に要請したそうです。そして国は今後は増やすことにしたそうです。これから、海の汚染の実態も解明されていくんでしょう。魚に限っていえば、いまは基準値以上のセシウムはコウナゴとイカナゴからしか出ていないそうで、他の魚介の放射線含有率は水産庁のホームページで好評だれているそうです。海に流れた瓦礫も、海を汚す要素としては大きいものですが、それは数年かけてハワイの北東に流れ着くということが分かっているそうです。

いろんな質問が飛んでいましたが、最後に女性(若いお母さん?)の方、「大人はしょうがないとしても、小さい子供はこの先ずっと高くなった放射線量を浴びて成長していかなければならない(←これは現状でも世界平均より低いと説明があったのですが)、たまった放射能の影響でDNAに障害がでたりしないのか。もしかしたら、仙台の人とは結婚しないとかいう差別にあったりするんじゃないか?そのときに遺伝子が健全であるということを調べる手立てはあるのか…」というような心配をしてました。
理学部の先生なので、この質問に答えろというのもどおかと思いましたが、切実な不安としてはあるのでしょうし、田村先生が個人的な考えとしてお答えになってました。少なくても今仙台で暮らす限りはその心配は過剰にしなくていいレベルだと思う。それでも心配ならもっと数値の低いところへ引っ越すなりするしかない。そして、そんな差別があっていいはずはないのだが、将来的にその問題が起きるとすれば、むしろ福島の方が深刻だろう。そういうことが起きないよう今から教育の面で手を打つとか、対策は必要になってくるかもしれない…と。
原発問題は、放射能汚染の広がりを客観的にとらえてリスクを回避するためには理学系の知識が必要だけれど、そこから波及する社会問題は今後もっと重いものとして浮上してくるんだろうなと確信せざるを得ないですね。
東北大も、医学系、倫理系、社会学系、心理学系、総動員で問題を解明・解決していってください。

あ、講座のレジュメは後日主催のホームページにアップされるそうです。虫六の中途半端なレポートは当てにならないので、そちらをご覧ください。



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