2011年12月30日金曜日

「幕末太陽傳」のデジタルリマスター版で映画見納め

フォーラムで「幕末太陽傳」(川島雄三監督)のデジタルリマスター版の再上映をやっているというので、滑り込みで観に行きました。

“伝説の名作”の呼び声高い本作ですが、ちゃんと映画館でみたことがありませんでした。和田誠さんのエッセイ&似顔絵や小沢昭一さんのエッセイなんかで、イメージだけ膨らませていましたが…。
想像以上に(っていうか、たかが私の想像力なわけですが)、面白かった。胸を患いながらも、無茶苦茶な激動の幕末を逞しくしたたかに生きる居残り佐平次(フランキー堺)の魅力。自分の記憶にあるフランキー氏はもう大物のおじさんって感じでしたが、若い頃はこんなにいろんな意味でかっこいい俳優だったのだなと感心。江戸の粋っていうか、すいっていうか、もうこんな表現力存在しないな。若い時分の南田洋子演じる品川遊女・こはるのハスっぽさのかわいいこと。ライバル遊女・おそめ(左幸子)との喧嘩シーンの長回しは迫力ありました。想像通り、石原裕次郎は大根でしたが… ( ̄◆ ̄;)。
落語の題材がいっぱい散りばめられ、くわしい人には2倍も3倍も面白かったに違いないと思われ、もうちょっと教養つけて、もう1回みたいくらいです。
DVD出ないかな〜。

あ、映画冒頭には1950年代の品川駅から出発する電気機関車の映像もあったりして、その筋の方には(限定的ですが)うれしいかも。



「招月」のお蕎麦食べ納め

29日、年末でみんなが休みだったので、お昼は「招月」で今年の食べ納めをすることにしました。

虫六子と家人Tは今月のおすすめ「みぞれ豚そば」。

虫六は、冬季限定「せりそば」。
せりの香りが清々しくて美味しかった。

年末なので、特別注文「天ぷら盛り合わせ」。
3人でひと皿つつくくらいがちょうど良い量ですね。
やっぱり天ぷらはお店で揚げたてを食べるのが旨い!

おまけで、そば羊羹をいただきました。
甘さ控えめな素朴な味、小豆バーを思い出しました。
そばつゆのあとでお口直しにちょうど良かったです。

今年もご馳走さまでした。来年もまた行きますね〜。


クリスマス「さかな」ライブ

25日はもうひとつお楽しみがありました。
東京を中心に活躍する男女ギターデュオ「さかな」のS市初ライブを、広瀬川河畔の「モーツァルト・アトリウム」に家族で聴きにいきました。

大人の事情か機材関係のトラブルか原因はよく分からないのですが、開場時間がほぼ1時間遅れて、極寒の玄関外階段、および、野外で待たされた(朝は回避できたのに…、つか、家人Tは1日2回も行列立ち… ┐(´д`)┌)ことをのぞいては、味わい深いいいライブでした。
新しいCD「Campolano」からの曲を中心にまだ音源が出来ていない新曲なども…。
CDで聞いていた印象から、ボーカルのポコペンさんはもっとボリューミーな方かと想像していたら、素朴でかわいい感じの方で、イメージ違っていました(苦笑)。でも、ソウルフルでブルース感ある太めのボーカルは日本人離れしていると思います。西脇さんのエレキギターもじっくり聞くと、こんなギター聞いたことないなぁという豊かな音色。大人なライブでした。

それにしても開始遅れは勿体なかった。前座の曲数を半分にしても「さかな」の曲がもっと聴きたかったといっては、前座の彼らにかわいそうでしょうか。


2011年12月27日火曜日

玉三郎チャリティ対談

12月25日 S市内F崎デパートにて、「板東玉三郎チャリティ対談」なる催しがありました。

前日はガスパ家酒宴にもかかわらず、翌日は早朝から整理券をゲットしにいくため、酒は控えめにした虫六。なにしろ先着200名で、整理券がなければ間違いなく門前払いだもんね。
しかし、寒波到来の昨今、病み上がりの身体で1時間も野外に並ぶのって無茶すぎるかなぁ?と、さすがにわが身が心配に…。ダメ元で、家人Tに「2千円でどおよ?」と代行を頼んでみたら、「やぶさかでない」との返事!!すまんのう…( ̄◆ ̄;)
てなわけで、1時間前から並んでもらい(配布開始は朝9時半から)、ゲットしてもらいました!「50番」指定席だそうです。ありがたや〜!

「わが心の歌舞伎座」展の関連企画で、玉三郎丈がS市まで足を運んでくれたということだと思いますが、対談のお相手がなぜか楽天球団オーナー・S田亨氏(むむむ、楽天のオーナーが歌舞伎ファンなのか?想像しがたいが…)。で、司会はおなじみなFM仙台のI橋恵子さん。
会場は想定通りびっしり(!)中年以上のご婦人達で満たされています。整理券1番をゲットなさった方は朝の5時から並んだとか。やっぱりいましたか、そういうコアなファンが!

対談の中味は…。予感があたって、玉三郎丈と楽天S氏に接点はなし。お互いに、野球しらない、歌舞伎みたこと無いという話ではじまり、玉丈のトレーナーが元・野球選手のトレーナーだったとか、S氏の奥さんが新国劇の俳優さんの孫だとか…この先どおなるのか?この対談は?
とりあえず、玉丈が全国でチャリティー公演をやって集めた募金を9月になってから東北各県の被災地に届けた話題(ひっそりとやられていて、地元紙も記事にしなかったのよね。)。
「やればやるほど自分の微力さを思い知った」と玉丈。でも、形にできることは限りがあても「被災地のことを忘れていない」という志があることをお伝えしていくしかない、と。玉丈は阪神大震災の時も行動しているし、中国公演の時に四川大地震にあい、急遽チャリティ公演にして支援活動をしている。今度の支援活動もそんな経験がこの行動につながっているのでしょう。かの梅蘭芳(メイ・ランファン)が来日した時に、ちょうど関東大震災があり、公演をチャリティにして募金を集めたそうだ。先達があるのだと。
しかし、簡単にやれることではないと思うし、本当にありがたいと思う。
歌舞伎座閉場後、玉丈は今年は基本的にオフにしていて、偶然歌舞伎公演の予定がなかった(そういえば、ほとんど舞踊公演でした)ので、行動できたともおっしゃっていました。

素潜りを趣味にしている玉三郎丈、海は大好きだが、人間は海には立ち向かえないという脅威も感じているという。「スローライフ・スローフード」の信条にもふれ、原発をいらないというためにはそういう暮らし方をしていかないといけないからと、部屋の電気を消しまくっている話。でも、劇場でいっぱい電気使うので大きい顔は出来ないのだけど…と(苦笑)。そして、最大の防災は「運命に立ち向かう覚悟する」ことだと。
とにかく、今年は芝居をすることに抵抗がありましたと言っていました。

対談時間45分のうち、半分くらいが楽天とI橋さんのS市被災してこうだった頑張ったという話に費やされ、ちょっと玉丈アウェー感漂う中、芸談や今後の活動をどうしていくのかという点に触れることなく、会場からの質問コーナーもなく、物足りなさを感じたのは私だけではないと思われます。
紛れもなく「玉三郎」を見んがため5時から並ぶような観客を集めているんだから、役者と観客の関係を承知して、中味も汲んでくれれば良かったのにね。

しかし、この対談をきっかけに、楽天球団とF崎デパートとFMせんだいあたりがスポンサーになって、玉三郎公演をS市で実現してくれるというなら、話は別です。大歓迎!!!
太陽光発電と蓄電池による特設会場を楽天球場内に設置し、玉丈の芸術監督による伝統芸能の祭典とか、妄想膨らみますが…、よろしくお願いしますよ。

追記)
対談中、I橋さんが震災の時に電気が消えて星空がきれいだったとか話しつつ、「辛かった経験ものど元過ぎればで、また便利な暮らしに戻れば忘れてしまう。マスコミに携わる人間として…」とかなんとかおしゃっていましたが、…誰が忘れるかよ!です。少なくても精神的に3.11の前に戻ることなんかできないと感じる程、我々は大きなダメージをうけてしまったのです。戻れるわけないのです。あの震災を目の当たりにした人なら別の場所からスタートせざるを得ないと考えるのが当たり前ではないでしょうか。しかし、そんな暮らし方の仕組みを変える話以前に、私たちは取り戻さなければならないものがあるように思います。
あのあと、(スポーツは例外だったらしいけれど、)エンターテイメントはこの事態に…という後ろめたさでそれを求める心にブレーキが掛かっていました。本当に好きなものが心から楽しめない状況、…しかし、9ヶ月が過ぎて、今回集まった人たちは、こんなことが楽しみにできるくらい「心の余裕」が生まれてきたんだと思います。それは、ほんとうはとっても大事なことであるはず。
だから、仲立ち役の方は、できれば役者と観客とをもうちょっと交感できるよう運んでいただきたかったなぁと思ったのでした。

そして私としては、「私たちはもう大丈夫なので、玉三郎丈にはご自身のお仕事を心おきなく全うして、良い芝居や舞踊を沢山見せて欲しい」と伝えたかったのです。







2011年12月26日月曜日

ガスパール家でクリスマス

クリスマス・イヴの日、恒例のガスパ家でクリスマスパーティがありました。
去年は、虫六子の高校受験に重なって参加できず残念だったのだね、たしか。
毎年参加の関白家のご両人が、震災の影響でご主人転勤となってしまい、参加出来ず…寂しいのう。そんなわけで、いつもの2家族で。

とはいえ、ガスパール君は今日も元気です。ご馳走を前に1枚激写の虫六子。
今夜の前菜は、バーニャ・カウダで食べる生野菜&ピクルス。このちょっぴりしょっぱいイタリアのソース(写真は右端で半分切れていますが…)が美味しくて、パンから何からつけて食べちゃいました。

メインは、むっちりパリパリに焼けたローストチキン!クリスマスはこうこなくっちゃ!
親方切り分けてください!!ワインが進んで危険。

キノコのキッシュもいけました。ほかほか〜。
デザートは虫六家オリジナルのティラミスと今年初物のメロゴールド…だったのですが、虫六子、食べるのに夢中で写真撮り忘れ…(;´▽`A`` 
(ちなみに今日の写真は全て虫六子撮影)

お腹いっぱいにしつつ、みんなでフィギュアスケートなど見つつまったり過ごしたのでした。しかし、尻餅3回ついて優勝とはT橋…なんだか納得できないぞ〜。

それにしても、今年はガスパール家には言葉に尽くせないほどお世話になりました。いろいろ思い出してしまうけれど、ほんと心から感謝しかないのです〜。友情って有り難いなと実感した今年。来年以降もずっとよろしくお願いします。


2011年12月20日火曜日

藤崎デパートで「わが心の歌舞伎座展」

外出許可が出てすぐに羽を付けてTOKIOまで日帰りしたツケが回って、絶不調の虫六。
ぐわ〜っ。
しかし、用足しがありFデパートまで足を伸ばしたら、なんと(!)歌舞伎座閉場期間の巡回展「わが心の歌舞伎座」展をやってました。しかも今日から1週間のみ。知らなかった〜!呼ばれたかなーオレ。



まだはじまったばかりのせいか、夕方だったせいか、あまり観客もいなくて、じっくりゆっくり見れて、これまたラッキーでした。


デパート催事なのでスペースは広くないけれど、第4期歌舞伎座のロビーで我々を出迎えてくれた赤い絨毯や朱漆の大柱、客席への入り口扉などがいきなり再現展示(天井の高さは違うけどね…)されていて、懐かしさがこみ上げました。貴重な設計図、実際に使われていた部材で花道も再現。
黒御簾で使う楽器や擬音の道具、「暫」「勧進帳」「京鹿の子娘道成寺」などの衣装、四代目芝翫や五代目菊五郎など明治時代からの歴代の名優をずらりとパネル展示。(なんでこの舞台写真なのか?!というのもありましたが…)
2013年開場予定の第5期歌舞伎座の設計プランパネルなども展示されてました。
何げに松竹さんのシネマ歌舞伎のコマーシャルDVDも。

本物の資料がいろいろあったので、意外に面白く見ました。


で、こ、こんなチラシ↑が何気なく掲示されているではあーりませんか。
知らんかったー!知らんかったよー! Σ(゚□゚(゚□゚*) 
今日、Fデパートに来て良かった〜。
問題は25日までに体調が回復しているかどうかなんですが…。
早起きできるかなぁ〜 (;;;´Д`)ゝ 



2011年12月19日月曜日

杵勝会歳末チャリティー長唄演奏会

外出許可が出て2日目、虫六はどこにいたでしょう。答えは、有楽町朝日ホールでありました。
毎年恒例「杵勝会歳末チャリティー長唄演奏会」は、わが忠美恵一門の年に1度のお楽しみ。腹が痛かろうが、矢が降ろうが、聞き逃したくありません。
「どういうことですか?意味分かんないんですけど…」という家人Tの刺さる言葉をえんやこら乗り越えて、先生やお姉さま方と遠足気分で同じ新幹線に乗ってやってきちゃいました。


いやはや、杵勝会は実力者揃いなので、この演奏会はいつもながらうれしい(≧∀≦)。
今年聞き逃すと、また1年またねばなりません。東京に住んでいれば、他流派や長唄以外の邦楽演奏会を聴きに行くチャンスも多々あるのかも知れませんが、S市ではほとんど無いので、「とにかく1年に1度これを聞く」というのが凄く大きく、楽しみなのでした。


今回、もっとも印象に残ったのは、「吾妻八景」(唄/勝吉治・巳之助、三味線/勝正雄、上調子:勝十郎)!この若い2人の三味線のすばらしい掛け合い。たった2丁なのに音色は冴えているし、絡んで複雑で、しかも、美しい!この曲はCDもあるし何度か聞いてはいますが、こんなに面白い曲だったのか!!!!と目から鱗が落ちました。あんなに弾けたらそりゃ楽しいでしょう。

それから、勝幸恵師匠の立三味線率いる女流演奏家6丁6枚と囃子の「喜撰」。どうしてこんなに綺麗に合わせることができるのでしょう。(涙)杵勝って、女流の方々も層が厚いのでしょうね。それにしても、勝幸恵先生の演奏に圧倒されました。もっと聞きたい!生で聞ける機会を逃したくない…。(1月10日にHNK・FMの「邦楽にひととき」で、勝幸恵先生の演奏が放送されるそうです)

当代家元の演奏は「春の調」。長唄に琴が共演して、麗しい演奏でした。わが一門でも予習していたので、聞き覚えのあるフレーズが頭に入っていたおかげでますます面白かった。唄も勝四郎師匠だったし。

大トリは勝国師匠が立ての「勧進帳」。今年は歌舞伎でも勝国師匠の演奏にあたって、ラッキーこの上ない年でしたが、その年の聴き納めにふさわしい演奏でした。お三味線は脇が裕光、勝松、勝国毅、勝七郎。唄はやっぱり立てが杵屋東成師匠(待ってました!)、脇が勝四郎、勝彦、正貴、利次郎。「瀧流し」超絶ですから。

虫六が秘かに「美しすぎる上調子の喜三」とお呼びしている寿浩師匠のお名前がなかったので、今回は参加せずなのかとガッカリしていたら、なんと「勝七郎」を襲名なさっていらして(しかも去年の6月!おめでとうございます。つか、去年も聴きに行ったはずなのに、忘れてる?)、いつもの美しい演奏を拝聴することができました。良かった〜。
2曲ご出演で、1つは唄方・直吉師匠(賛助出演)の「連獅子」に、和吉師匠の脇三味線として。そして「勧進帳」の上調子で!!
どうやったら、あんなに綺麗なお三味線が弾けるのか。はぁあ。

いつもは、やみくもにお三味線ばかりを追いかけていましたが、今年はちょっと余裕がでてきて(?)、お囃子も面白いと感じながら聞きました。特に「連獅子」は、舞踊の獅子の動きなども多少オーバーラップして、どんな場面かが思い描けるようになって、霊獣らしさもお囃子が表現していて、その緊張感なども心地よく聞けました。

また、大所帯の演奏の場合の、バンマスである立三味線の「間」の持ち方と息、演奏の引っ張り方、並んだ演奏者の音の出し方など、1つの演奏にまとめ上げるために、それぞれの役割や配慮が少し垣間見えて面白いと感じました。立三味線は他の演奏家に比べて、バチの動かし方が大きく、これは1列に並んだときに遠くの奏者にも「間」が伝わるようにということらしい。バチが指揮棒なんですね。これまで知りませんでした…。
それにしても、一番端っこにいる上調子がたったひとりでぴったり合わせて来るのってやっぱり相当凄いことだなぁと思う。

また来年、たのしみです。
(っていうか、もっといろいろ聞く機会が欲しいものです)





2011年12月17日土曜日

お風呂解禁!

白い宇宙船から帰還後も、世の中の重力になれるため、自宅謹慎状態だった虫六。
本日(16日)は、船に戻ってドクターの検診を受ける日でした。
仕事にいかず家にいることに、どっぷり慣れて、半ば引きこもり状態で、ほんと出かけるのがおっくうじゃ…と、思っていたら、大雪ですか ( ̄Д ̄;;今日に限って…。


なにわともあれ、出かけたついでに、10コほどの用事をいっきに片付け、ちょっとヘトヘトモードでした。

しかし!ドクターから「今日より普通の暮らしに戻して良いよ。お風呂にも入っていいですよ!」とのお墨付きをいただきまして、約4週ぶりに「湯船」に入ったのでした〜!!
しかし、同じようなことを、今年はあの震災の後にも書いた気がするなぁ。
今年は風呂に入れない総日数が2ヶ月以上におよび過去最高だったかも。

2011年12月10日土曜日

「都鳥」

今月からお稽古の曲が変わります。
新しい曲は「都鳥」。
姉弟子の皆さんも通過してきた曲で、ゆっくり弾いても10分ほどの練習曲にも相応しい曲と思われます。

で、先生のお稽古をいただくにあたって、曲についての要説など調べてみました。

「都鳥」

制作年代 安政2年(1855)6月
作曲   二代目杵屋勝三郎
作詞   伊勢屋喜左衛門(片町組五番組中の札差)

隅田川の春から夏へかけての情景を品良く諷った独吟もの。唄の美声が充分にきかせられ、情緒あふれる作曲である。(本調子)
(「長唄名曲要説」より)

「たよりくる 船の中こそ床しけれ
 君なつかしと都鳥
 幾夜かここに隅田川
 往来の人に名のみ問われて
 花の影 水に浮かれて面白や
 河上遠く降る雨の
 晴れて逢ふ夜を 待乳山
 逢うて嬉しき あれ見やしゃんせ
 翼かはして濡るる夜は
 いつしか更けて水の音
 思ひ思うて深見草
 結びつ解いつ 乱れ逢うたる夜もすがら
 はやきぬぎぬの鐘の音
 憎やつれなく明くる夏の夜 」


もっと詳しくみていくと、成立は
「女清玄の隅田川の場面の独吟に用いられたもの」で、出来が良かったので独吟ものとして流行し人気がある曲とのこと。

通称《女清玄》は、四世鶴屋南北作の世話狂言『隅田川花御所染(すみだがわはなのごしょぞめ)』が正式タイトルで、文化11年(1814)3月江戸・市村座の初演だそうです。いわゆる〈清玄桜姫物〉の一つで主役の清玄を尼にしたもの。
「入間家の惣領花子の前は剃髪して清玄尼となるが、死んだと思った許嫁松若に出会い破戒し、妹桜姫に嫉妬して浅茅原の庵室で殺される。」というあらすじで、「筋よりも直接感性にうったえる野路の玉川の蛍狩で松若と清玄尼が契りをかわす夢の場や、春の隅田川で白魚の網を打つ松若と、零落した清玄尼がすれ違う夜船の場面などが魅力」(「新版歌舞伎辞典」より)とあります。この春の隅田川の場面で使われた曲が「都鳥」と言うことですね。
この演目は、女形岩井半四郎(五世)の見せる坊主頭姿に扇情的な倒錯の美学があり、それが頽廃的な幕末の世相にあって大当たりをとり、改題・改作を重ねつつ今日にまで舞台生命を保っているとのこと。初演から作曲までのタイムラグは、この繰り返し上演の過程で、付け加えられた演出だったということでしょう。

ぼろぼろに落ちぶれた清玄尼が、その原因になった死んだはずの許嫁とすれ違う無情で皮肉な場面を、春の隅田川のうららかな情景と恋心を美しく唄った「都鳥」が彩ることで、より悲劇を色濃く映し出したということでしょうか。倒錯しているなぁ。

(「隅田川花御所染」の五世岩井半四郎 豊国画 「歌舞伎辞典」より。)

ところで、ここに登場する「都鳥」とは、「百合鷗(ゆりかもめ)」(モノレールではありません)のことだそうで、隅田川限定の適用ですね。古典『伊勢物語』の在原業平が詠んだ「名にしおわば いざ言問はん都鳥 わが思う人はありやなしやと」の和歌を掛けているのはもちろんのこと。浮き寝の鳥にかこつけて逢瀬をちぎる恋仲という実はエロチックな内容を上品に表現した唄でもあります。

もともと場面の独吟として成立した唄なので本来は前弾きなどはなかったのですが、のちに独立して演奏されるようになって前弾きが工夫されるようになったそうで、流派によっていろいろなパターンがあるとか。ちなみに文化譜(赤本)には、4種類載っております。隅田川の情趣を表現しているので、いずれも「佃」の旋律が主題として取り入れられているそうです。

具体的な曲節については、先生のお稽古で教えていただくわけですが、予習で聞いた感じ(音源は「七代目芳村伊十郎 長唄大全集15」の山田抄太郎師匠の三味線)ですと、優美艶麗なところと合方のパリッと小気味よく聞かせるところのメリハリもあり、何げに技術を要求される感じもあり(汗)、大変面白い曲かと。

お稽古がはじまるのが楽しみなのでした。がんばるぞ~!

〈今日の参考文献〉
浅川玉兎「長唄名曲要説」1976 日本音楽社
「新版歌舞伎辞典」初版1983(新版2011) 平凡社


2011年12月8日木曜日

季刊ココア共和国vol.8に「地震のこと」掲載

(株)あきは書館というところから、「季刊 ココア共和国」という小さい詩集が送られてきました。なぜ?私に…?

中を開いてみると、なんと!10月のsmtでやったオープン・カフェ「震災のあとで〈表現する〉こと」で、いがらしみきおさんとクマガイコウキさんが朗読した詩がそれぞれ活字になって載ってるではあーりませんか!
う、うれしい。(≧∀≦)
しかも、カクテル・ポエムという画と詩によるいがらしさんの新作「人は死ぬのを知りながら」も所収。気になる人は必見です。

それにしてもなんで私に?と、添えていただいた手紙をみると、いがらし先生の紹介で…と書いてある。なんでいがらし先生が私の住所を…とかとかグルグル考えながら、でも、なんだかうれしい。オープン・カフェのあと、活字無いのか?と騒いだ甲斐がありました(←内輪でですが)
この詩集、不勉強で存じ上げませんでしたが、もう8集目とのこと。S市の詩人の方々も頑張っているんだな。何はともあれありがとうございます。

○季刊 ココア共和国 vol.8

2011年12月1日発行
著書  秋亜綺羅
編集人 柏木美奈子
発行  (株)あきは書館
ISBN978-4-904391-13-6
C0095 ¥500E

【目次】

 ニザール   四方田犬彦
 化け物    須藤洋平
 地震のこと  いがらしみきお
 仮称岩松と四千万円とマッチ売りの少女と私たち  クマガイコウキ
 あんぱん   豊田和司

小詩集
 詩人の詩はつまらない 秋亜綺羅

カクテル・ポエム
 人は死ぬのを知りながら いがらしみきお

ブログ ココア共和国
 詩と舞踏 in 青森
 アート・アトランダム1〜6
   

2011年12月7日水曜日

てぇへんだ!!!隣が家事だ!

今朝、家人Tが出掛けに「隣の棟から煙が出ているから火事かもよ」と、冗談みたいなコトを言いながら出勤していったので、廊下に出てみたら、本当に煙が出ていた。

確かに、緊急警報みたいな音が鳴っているらしく、隣棟に住んでいる人たちがみんな外に出てきて、電話なんかかけている。理事会の人らしき方が「みんな外に出て…!」とか言いながら、おいでおいでしてる。
でも、こちらの棟のひとたちは慌てている様子がないので、とりあえず上階から観察することに。ちと寒い。
(第一、おいら安静中なもんで、階段降りとかキツいんですけど…)

みるみる内に、あっちこちから消防自動車10台くらい到着。でっかい梯子車がなかなか方向転換できなくて手こずってましたが、やっと梯子を伸ばし、やってきた給水車もマンションの入り口や近くの道路で待機して、消火活動に入りました。

風もないし大丈夫かな…と部屋に入る。
外の喧噪はほとんど聞こえて来ない。
…かえって怖いんですけど。

昼ごろ様子をみたら、小さい消防車と署用車みたいなのが3台だけになって、消防士さんが数人うろうろ。マンションの一部が黒焦げになっていた…。
年の瀬に…大変。

震災とか、火事とか、うちのマンションも満身創痍ですよ。

2011年12月5日月曜日

11月に読んだ本

11月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:1500ページ

銀座開化おもかげ草紙 (新潮文庫)銀座開化おもかげ草紙 (新潮文庫)
煉瓦造りの洋館、ガス燈、耶蘇、骨碑、洋娼、兎相場…御一新は、政治だけじゃなく精神生活や市民生活も変化を余儀なくし、その混乱の中に日常があったのですね。原題は『銀座開化事件帳』。たしかにヤバイ事件は起きるものの、時代が変わっても悪いやつが偉ければ下々のものは口も出せず気狂いじみた蛮行にも打つ手なし…という、スッキリ解決するどころか、どっぷり暗いイメージを引きずりつつ、救いのない展開。仕掛人出て来いっ!って感じでした。松井作品にしては読みにくい印象。事件ものを書きたいわけじゃなかったのかな。比呂姐さん好き。
読了日:11月30日 著者:松井 今朝子

Sunny 第1集 (IKKI COMIX)Sunny 第1集 (IKKI COMIX)
出た出た!「竹光侍」が終わってしまって、寂しい日々でしたが、また面白いのが始まりましたね。ハルオの妄想癖とか、初っ端から思わず頬が弛んでしまいました。複雑な背景を持った子供たちが微妙に絡んでいそうですね、まだホンの序章ですけど。園長先生の孫さんにも気が抜けません。「ピンポン」「鉄コン筋クリート」とか、復習しとかなくっちゃ!
読了日:11月26日 著者:松本 大洋

あさひなぐ 3 (ビッグ コミックス)あさひなぐ 3 (ビッグ コミックス)
たぶん解脱してないと思われるスパルタ尼僧登場。虎の穴みたいな謎の特設道場でステレオタイプなシゴキがはじまりました。だんだん展開に新味性がなくなっているところが気になりますが、3巻目まで読んだからとりあえず次も読むでしょう。
読了日:11月25日 著者:こざき 亜衣

困ってるひと困ってるひと
聞いたこともない突然の自己免疫系難病の発症で、ビルマ研究者を目指す前途ヨウヨウの25歳の人生に急ブレーキ、あり得ない闘病生活の開始。身体の苦痛も想像を絶するものですが、全面的に信頼している医師の、心ない言葉に傷ついたり、友人の親切にも現界があると思い知るくだりは、生活弱者の苦労がリアルに伝わってきて痛い。みんな人なんだよなぁ( ̄^ ̄|||)お尻大逆事件も衝撃的過ぎて言葉なし。入院病棟で読む(難病でもなんでもないが)のはタイミング悪すぎましたが、更紗ちゃんのチャーミングな文章力と恋の話題で救われました。
読了日:11月23日 著者:大野 更紗

のぼりくだりの…のぼりくだりの…
100歳の人が地球の片隅にいて、虹や虫や昔の記憶やテレビなんかを相手に、遊び心たっぷりに、つぶやくような言葉を交わしている…。詩人ってすごい。
読了日:11月21日 著者:まど みちお





あさひなぐ 1 (ビッグ コミックス)あさひなぐ 1 (ビッグ コミックス)
マイナー部活もの(^^;?)今度は長刀か…。しかし、娘が元気のいい元女子校の武道系部活で活動中なので、空気感が伝わってきます。天才系でないドジな主人公の成長譚。そこもかぶるかな…(⌒-⌒; )
読了日:11月13日 著者:こざき 亜衣

春を恨んだりはしない - 震災をめぐって考えたこと春を恨んだりはしない - 震災をめぐって考えたこと
震災が襲った真ん中の街に住んでいて、辛うじて震災を逃れながら、その全体をどう捉えたらいいのか立ちすくんだままだ。あの時、池澤さんはこんなことを思いながらこんな風に動いたんだな。復興のリーダーシップをとっている政治家や学者はこういう本を読んでいるのかな?原発に関する指摘も鋭い。原子力開発の致命的な落とし穴は材料工学にある、人類はまだ核レベルの強度を持つ材料を作る技術を得ていない、と。だだ漏れの放射能を遮断する容器はない。日本人だけでなく、人類の奢りと欺瞞を胸に刻んで、世の中全体の暮らし方を変えなければ。
読了日:11月09日 著者:池澤 夏樹

2011年12月4日日曜日

妄想詩歌句集「白い宇宙船」

ぱたぱたぱたと、
災害用自家発電のエンジンで、
白い宇宙船は飛び立つ。
カーテンで仕切られた方形二畳ばかりの無重力空間。
文庫本と隠し持ったiPadを枕元において。

綿虫や 「禁止」横目に メール打つ


味気なき 宇宙食をば 食みいつつ
わが箸とまる 談志逝去の報

天井に 3.11の痕みたり
宇宙船なれば 地震は無きと思え


大液晶 鎮座ましますオペ室で
わが腹切るや べっぴん先生


気がつけば つまらなき夢みていたり
そもそうそうに 忘れ去りたり


 ぼんやりと 銀杏の葉音 夢うつつ


銀河路に わが胎わたは 
蒸気列車の炉と化せり
夜を迷いつ


長き夜
右を向けば 黒きコードのドーム
左むけば 発光するチョークが散乱する床
上むけば 鉄道模型のモジュールを選べとのノルマ
これすべて我の妄想なり
と、夢中に思う


日に三度 宇宙食をば 画におさむ
誰に見せるとも無し
おもしろくも無し


しらじらと廊下の電気ともされば
わがモーニングコールは
「都鳥」なり


*12月3日、無事生還せり。
(お粗末さまでした〜 (;´д`) )