2013年8月29日木曜日

七之助の「春興鏡獅子」その2_歌舞伎座新開場柿葺落 八月納涼歌舞伎

さて、前段が長くなってしまいましたが、今月の七之助「春興鏡獅子」です。

もともと真女形の七之助ですから、前シテの弥生は本当に綺麗です。
きびきびしているだけでなく、典雅…。袱紗の踊りの海老反りもしぇ〜ってくらいの体位を決めるし、舞扇の二枚遣いもびしっと決まりました。でも、感じたのはとても丁寧に心を込めて踊っていたということ。スピードだけで見せるということもなく、本当にたおやかで綺麗でした。千穐楽のせいかもしれないけれど、このときを惜しむような、時間のカプセルに閉じ込められたような空間でした。

もちろん父・勘三郎のこの演目は大好きだったし、虫六も幸運なことに2回見るチャンスがありました。なんとか元気を取り戻してもう一度踊って欲しいと心から願っていました。それは叶わなかったけれど。兄の勘九郎の踊りは、上手なことは評判通りですが、本当に父の踊る姿に似ていてビックリするのです。しっかり仕込まれたのだなと思います。七之助も同じ訓練を受けているはずですが、2人とは少し個性が違うという印象を受けます。体型などのせいかもしれないし、見る人がみれば踊り方はそっくりなのかもしれないけれど…。

そんなことを感じながら舞台に向かっていたら、ちょうど獅子頭を手にして踊り始め蝶々が現れて、獅子頭が勝手に動き始めた、その時!……勘三郎が降りてきた……と思いました。獅子頭にひきづられていく仕草をしたその姿に、在りし日の勘三郎丈がオーバーラップしました。(あぁ、中村屋の踊りだ…)
まことに不思議な、勝手な、感慨ですが、客席にいるこちらまで、向こうの世界に連れ行かれそうでした。
ドーパミンあふれでるですよ〜。

弥生が花道から舞台を下がると、胡蝶の精が2人出て来て踊りますが、これが鶴松と虎之介。鶴松くんは小さい時から何回も胡蝶を踊っているので、目をつぶっても踊れる感じでしょうか。やっぱり上手いんですよね。たぶん、胡蝶にしてはやや育ちすぎですかね。…というより、そろそろチャンスがあったら鶴松くんの「春興鏡獅子」を見たいです。きっと良いと思います。

長唄は、唄の立てが杵屋勝四郎、三味線の立てが杵屋巳太郎の七枚七挺。やった〜!小躍りしちゃいました。筋書きには、勝彦、利光、巳津也…とのご贔屓の唄方の名前もあったのですが、千穐楽の舞台にはいなかったようです。お三味線のメンツも筋書きの表記とは違っていたみたい。囃子は田中傳左衛門社中。みなさん、勘九郎と七之助の舞い競べをどっちもみたんですね。いと、うらやまし。
勝四郎師匠の美声、そして、巳太郎師匠の「はお〜〜〜〜」も大薩摩もすっきり清廉なキレがあって気持ち良かったです。

そして、この清々しい演奏で浄められた舞台に、乱序のお囃子…。うわ〜、出てくるぞ…霊獣が…という気配が漂ってきました。
そして登場した獅子の精がキリッとして敏捷でカッコいいこと。獅子の白いふわふわの鬘が似合っています。この獅子はまだ若いね!獅子のようでもあり、麒麟のようでもある。

狂いの毛振りでは、初めは大きな弧を描いて勇壮、後半はビックリするくらい早い動きで毛先がうねってSの字を書いていたよ。思わず、うお〜って歓声があがってました。
そして、息も乱さず最後のポーズ(足を上げてバランスをとるんす)。
すごい。_| ̄|○  若、よくぞここまで成長なされた。

幕が降りたあとの、虫六子の感想「七之助、カッコ良すぎ!!」

ひゃ〜、満足した。また見た−い、けど、今日が千穐楽。おつかれさまでした。
…と、満足した一方で、(まだまだ伸びしろもありそうだな〜)と期待も膨らむ虫六でした。
(来月は、兄弟で「吉原雀」なんですよね…。これまた良さそう…いいなぁ)


本日のお弁当は、歌舞伎座の地下売店でゲットした「鶴亀いなり」。
ちょっぴりわさびの利いたふっくら油揚が美味しかった。おかずもいろいろ入っていてグッドでした。

【おまけ】
これ、本当に蛇足なんですが、帰りに歌舞伎座地下のお土産フロアでぶらぶらしていたら、虫六子が「いまのO栗SとY田Yでない?!」と某有名カップルを発見しました。Oさんの方は、深く帽子を被ってオーラを消していましたが、ご夫人の方はサングラスこそかけていたけどモデル体型に10センチあるんでないか?というヒールのサンダルを履いて、頭ひとつ飛び出しす感じで目立っておりました。高いヒールで歩きにくいのか、ご主人の肩につかまり立ちするような感じで歩いておりまして、これは「平成の吉原おいらん道中」だな〜。さすがに人気俳優OSに肩貸しの男衆をさせるとは、女冥利につきるだろうなーと、妙に感心した次第。
ところで、もちろん歌舞伎見物に来たんでしょうね。誰を観に来たのかな??


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