2015年6月29日月曜日

男と女の杵勝会

「男と女の杵勝会」と先生が誘ってくださいまして、行ってみました「杵勝会東京定期演奏会2015」。振休をつかって、平日日帰りの強行軍でございます。杵勝会はチャリティー演奏会は何度か聴きに伺っているんですが、さすがに定期演奏会は気合いが入っていました。行った甲斐がありました。正午開始の「勧進帳」の大合奏から三部構成で大団円はセリ上がりの「靭猿」まで21曲!終演は夜8時にかかろうとしていました。たっぷり8時間、トイレにも行かず堪能いたしました。みなさまお疲れさまでした。


今回行って良かった感の第1は、
「吾妻八景」 唄_利光・巳之助、三味線_裕光・(上)勝七郎
ですね。
2枚2挺のシンプルな構成ですが、なにしろお三味線の美しいこと!このお二人が元気なかぎりは後20年はこの演奏が楽しめるのだ…と長唄に希望の光を見た気がしました。そして、表情が見えるって珍しいですが、なんだかとても楽しそうに弾いていらっしゃるのですよ、このお二人。合いの手のたびに後席から漏れてくるため息、演奏が終わって拍手の中に「吾妻八景もこうなるのねー」と感嘆の声が混じってました。ほんとね、(関係者の皆さんには悪いけど)オリンピックなんかどうでもいいから、「勝七郎の上調子」を日本国民全員に聞いて欲しいですよ、私は。レコードにしてください。

「春の調」 唄_東成・直吉、三味線_勝国・勝七郎、箏_米川敏子
これも美しい柔らかい曲。うわぉー、立唄が2人って普通あり得ない贅沢。聞き比べる機会もないので珍しいですよね。声質ってだいぶ違っているもんですね。虫六は素人なのでうまく説明できませんが、東成師匠はいわゆる“美声”というのとも違っているけど甘くて色気のある一度聞いたら虜になる魅力的な声、直吉師匠はもう少し太くて(でも低い声ではない)スッキリした声、東成師匠とはまた別の色気があり…それぞれ素晴らしい。(ちなみに勝四郎師匠は華やかな美声ですよね…)堪能させていただきました。また、お二人に曲をつける勝国師匠のこういう柔らかい曲も珍しい気がして、貴重な演奏でした。

「安達ヶ原」 唄_勝良・勝昭・勝一佳・勝眞規・勝乃夫、三味線_勝幸恵・勝如・勝くに緒・勝壽・勝孝、笛_福原徹彦、小鼓_堅田喜三久、望月左京、大鼓_堅田喜三郎、太鼓_堅田新十郎
女流だけの5枚5挺にお囃子という構成ですが、いつもは大楽団を率いる役目が多かった勝幸恵師匠の独奏がたっぷり聴けて痺れました。奥州安達ヶ原の鬼女伝説を題材にした能の「安達ヶ原」(あるいは*観世流以外は「黒塚」)から歌舞伎や舞踊の舞台にも展開しているこのテーマは今もおなじみものですが、長唄「安達ヶ原」はそれを音曲として仕立てたもの。しかし、今回目から鱗がとれる思いだったのは、長唄は芝居のものだ!ということでした。女流だったということもあるかもしれませんが、本当に唄方の皆さんが役者に見えました。勝良師匠が鬼女のオーラを纏っておるよぅ〜〜〜(||li`ω゚∞) 恐ろしくもあり、切なくもあり。旅僧の方々の緊張感もぱりぱり伝わってきて、お芝居を一本観るような満足感がありました。「安達ヶ原」って女流の方がいいね!それにしても、勝幸恵師匠の迫力の演奏…男性以上の力強さ、キレ、繊細さ…。こちらにも“鬼”がいらっしゃいました。カッコ良すぎです。…でも考えて見れば、一流の芸人はみな肚の内に鬼を飼っていらっしゃるのだな。

杵勝会は舞台演出も凝ってます。
「元禄花見踊」「風流船揃」「秋の色種」「鷺娘」の四季四題は、回り舞台でメドレー演奏という趣向。
「鷺娘」のたて唄が直吉師匠で、立て三味線が勝録師匠でしたが、回り舞台が回転したらどよよよ…と、なーんだかデジャブ感が…。そう、さきほどまさかの立唄揃いでお隣だった東成師匠と勝録師匠は双子なのです…、わざとか?

個人的には、勝壽・勝由葵の「梅の栄」…をじっくり膝を正して拝聴(はい、おいらの課題曲「梅の栄」まだ終わっていません!自己突っ込み)。
メリハリあって、合いの手パートの早いこと!良い曲だな—(感心…)こういう風に弾きたいな—と思う、演奏がそこにありました。
あー、練習しよ、練習。

「橋弁慶」では勝十郎師匠の立派な演奏。上手な人は体幹がしっかりしているというか、実に姿勢が良いです。三味線が身体の一部になっているのがよく分かります。

圧倒の三部構成「靭猿」で放心状態で、会場を後に新幹線で帰ってきました。

しかし、平日でも行こうと思えばいけるのか…黒い果実を口にしてしまった気分だ。


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